リエゾンとしての動物園

2002年11月14日(木) 9:15-


SAGAはこれまで、その理念として次の3点を掲げてきました。 1) 野生の大型類人猿とその生息域を保全する。 2) 飼育下の大型類人猿の「生活の質(QOL)」を向上させる。 3) 大型類人猿を侵襲的な研究の対象にせず、非侵襲的な方法によって人間理解を深める研究を推進する。

理念の実現を目指して、これまで4回のシンポジウムでは、環境保全、動物福祉、亜種の取扱いといった観点からの議論がおこなわれてきました。こうした議論を現実的でかつ持続的なものにするためには、研究者や飼育関係者といった直接的に関りを持つ者ばかりではなく、私たちの考えや活動を広く社会へ浸透させ、さらには根づかせる働きかけが必要です。

 市民と"野生"を結びつける「メディア」として、動物園は重要な意味を持っています。つまり、市民が類人猿をはじめ多くの野生動物とのよりリアルな関係を体験できる場は動物園であり、またそれは「環境問題」や「動物福祉」に対する関心を引き出せる場でもあると言えるでしょう。SAGAの理念を実現するためには、動物園は不可欠な存在であり、より良いものにする工夫が必要です。 動物園は、市民と動物をつなぎ、動物と自然をつなぎ、そして市民と自然をつなぐ「リエゾン」であるといえるでしょう。この機能を強化していくことは、SAGAの理念を現実のものとするためにも必要なのではないでしょうか? そこで、今回のSAGA5ではこの「リエゾンとしての動物園」に注目し、その教育的役割の可能性と展示手法という視点から見ての環境エンリッチメ ントについて検討したいと考えています。


具体的には、以下の2つのパネルディスカッションを予定しています。


『教育の場としての動物園』

司会:

五百部裕(椙山女学園大学)

小田泰史(蒲郡市立形原北小学校)

パネラー:

金森正臣(愛知教育大学)

山本茂行(富山市ファミリーパーク)

C. Andre


『展示手法として環境エンリッチメント』

司会:

上野吉一(京都大学霊長類研究所)

黒鳥英俊(東京都多摩動物園)

パネラー:

古市剛史(明治学院大学)

若生謙二(大阪芸術大学)

David Shephardson (Oregon Zoo)


総合討論

司会:

中村美知夫(日本モンキーセンター)

友永雅己(京都大学霊長類研究所)



『教育の場としての動物園』では、動物園での教育活動としてどのような実践があるのか、また教育の現場での動物園利用はどのように考えられているか、さらに研究者の責務としてどのような働きがあるかといった点について報告してもらい議論を進めていきたいと考えています。 『展示手法として環境エンリッチメント』においては、動物園で実践されているエンリッチメント・プログラムの紹介、さらにそうしたエンリッチメントが展示ないし教育的効果としてどのような働きをもつか、また研究者の視点から見た動物展示あるいはその手法に対するコメントをもとに議論を進めていきたいと思います。 それぞれのセッションには、外国からスピーカをお招きしています。『教育の場としての動物園』にはC. アンドレさんをお招きしました。彼女はアフリカでサンクチュアリの活動を行っています。その活動の概要を報告していただくとともに、サンクチュアリでの環境教育活動についてもお話していただきます。また、『展示手法として環境エンリッチメント』にはD. シェパードソンさんをお招きしました。彼は、動物園でのエンリッチメント活動の先駆者的存在でもあります。 これら2つのセッションの後、全体を踏まえた総合討論をおこなう予定です。